スカイリム♯2
ソルスセイムからソルスセイムかウィンドヘルム港…ソルスセイムからスカイリムへの大地と繋がる唯一の港へ着いた私とセロは、一度別れることにした。
どうやらセロはウィンドヘルムに住むダークエルフに知り合いがおり、少しの間そこに世話になりながら昔話でもしたいとのことだ。
セロと別れた私は暫く各地を放浪した後、「リバーウッド」という小さな村に着いた。
昼食を取ろうと村の中を歩いていると、衛兵のような格好をした男に声を掛けられた。
鎧は汚れて疲れ切った様子の男は私に旅人かどうか尋ねる。そうだ、と答えると男は声を掛けた理由を話して来た。
その内容はヘルゲンという土地にドラゴンが現れたという信じ難いものだった。
半信半疑で話を聞いていると、男はドラゴンからの逃亡で疲れ果てており、ホワイトランへの馬車も今は出払ってるために自分の代わりにここから一番近い都市、ホワイトランの首長にドラゴンの襲撃を伝えて欲しいと頼まれた。
あまりに必死な顔つきだったので思わず頼みを受けてしまった。
リバーウッドから出発して数時間、道中の野良狼に何度か襲われながらも無事ホワイトランに辿り着いた。
何度か話は聞いていたが、実際来てみると街の雰囲気も明るくいい街だ。
首長の場所を探しているとレッドガードの男2人組に話しかけられた。
あるレッドガードの女を探してるとのことらしい。心当たりは無いと答えると「見つけたら教えて欲しい、報酬も用意してある」とのことだ。
その後首長の元に辿り着いた私はドラゴンの襲撃を伝える。首長は驚いてはいたが、すぐに手を打つとのことだった。
しかし…何というか首長の割には親しみやすい…フランクな男だ。スカイリムの首長達はみなこうなのだろうか。
首長は私に感謝を述べると一つ依頼を頼んで来た。
ファレンガーという研究者が、ブリークフォール墓地と呼ばれる場所にある石碑を必要としているらしい。手に入ればドラゴン対策に役に立つそうだ。
ファレンガーによると一度リバーウッドに戻り現地人に詳しく場所を聞くのがいいとのことだった。
しかしドラゴンなど本当に…存在するのだろうか?
リバーウッドに入り、話を聞こうと雑貨店に入ると店主と女が口論している。
口論が落ち着くと店主がこちらに気付き、済まなそうな目を向ける。
店主に口論の理由を聞くと、家宝の「金の爪」とやらが盗まれたらしい。
店主はもう諦めているが女‥店主の妹は盗人を追いかけようと説得して来るらしい。盗人の行き先を知っているのかと訪ねると、偶然にもブリークフォール墓地に逃げて行ったという。
金の爪を取り返すのを約束に、店主の妹に地図に墓地の場所を書き入れてもらった。
どうやら墓地は山の上にあるようだ。
数時間の登山の後何とか墓地にたどり着く。
到着と同時に矢が飛んでくる。
どうやら疲労で油断していたらしい。
太古に立てられたであろう石の柱に身を隠しながら、矢が飛んでくる方向を確かめる。
いた、野盗だ。こちらも弓を取り出し柱から身を乗り出して何本か矢を放つ。3本目が命中、絶命する。
死んだ野盗の奥からもう一人突撃してくる。
弓をもう一度構え直して矢を放つ。
今度は1本目で命中。野盗が苦痛で脚を止める。さらに矢を放つ。命中、二人目も動かなくなる。
野盗の死体から矢を引き抜きながら墓地を見る。
巨大な入り口を見るに中もそれ相応に広いのだろう。野盗もまだ居るはずだ。
どうやら予想以上に大変な依頼になりそうだ。
スカイリム#1 プロローグ
ブレトンでありながらダンマーが構成員の殆どを占めるモラグ・トング*¹の一員だった私デシャムは、異種族に対する周りの目、標的と対した時に与える印象、そして過去に受けた傷を隠すために常に兜で顔を隠していた。
*¹モロウインドゥを本拠地とするダンマーの暗殺組織。闇の一党と違い政府公認
モラグトングは名家同士の抗争に介入することで、紛争が大きな戦争にまで発展するのを防ぐ潤滑油的な役割を担っていた。それ故に戦闘能力を持たないただの名家の1人を殺めることもあった。
私は、モラグ・トングに入る前の自分も驚くほど弱い人間だった。政府公認とは言え顔を隠さねば殺人など出来ず、組織に入る前の人を殺める事に対して楽観視していた若き頃の自分を何度も恨んだ。
様々な事情で素顔を隠さざるを得なかった私は、自然にこの奇妙なソルスセイムの兜がもう1つの顔となった。
モラグ・トングに入ってからものの数年で度重なる暗殺任務に心身共に疲弊し、私は組織を抜け出した。
組織のダンマー達は私のような異種族を黙って送り出し、引き続きモラグ・トングの兜を被り続ける事も静かに許してくれた。
この頃には周りにも私がこの兜抜きでは何も出来ないという事が知られる程には、どこに居ても兜を被っていた。
しかし、組織を抜けたあとも私は信じていた。
積極的に汚れ仕事をこなすものが世の中には必要なのだと。組織に入っていた時は苦しみながらも誇りを持っていた。
今も組織の鎧を着れる事にでさえ多少誇りを持っていた。
それから数年はモロウインドゥの各地を放浪していたが、最終的にはレイヴン・ロックという町に落ち着いた。灰が深々と積もり、鉱山の他は特に何も無い少数のダンマーが慎ましく暮らす寂れた町であったが、組織から抜け出した私のような人間にはぴったりの場所であった。
住み始めてから暫く経った頃、道で役人の男に声を掛けられた。どうやら町の評議員の身が狙われているらしい。
私に話しかけて来たのは、評議員の命を狙う人間を探って欲しいとの事だった。
自分達のような役人よりも、私のような最近町に来た人間の方が敵に怪しまれなくて良いと判断したらしい。
いきなり頼まれ戸惑ったが、自分が人の役にたてるという喜びと役人の必死さもあり、私は依頼を引き受けた。
途中暗殺を狙う一味の女に襲撃された事もあったが何とかこれを退け、奴らの本拠地と暗殺者達の目的や動機を掴むことが出来た。
どうやら狙われてる議員の家系であり、オブリビオンの動乱*²後台頭して来たレドラン家に対して、反対に動乱後に没落していったフラール家との逆恨みとも取れる確執が原因らしい。フラール家と言えば犯罪結社と密接に繋がり、上層部の連中と言えば平気で賄賂を受け取るという徹底的に腐敗した一家という話だ。
下の紙切れは当時私の書いた二つの名家に関してのメモだ
*²本作から200年前の前作のゲーム内で起きた動乱。デイドラの王子がオブリビオンの扉を開き各地で大規模なデイドラの侵攻があった。
役人に一度敵の情報について報告をした後、敵本拠地攻撃への準備を始めた。
この数年ソルスセイムの広野の小型の生物しか相手にしていなかったため、自分が十分に戦えるか不安があったために酒場で傭兵「テルドリン・セロ」を雇った。
腕が立ちそうだ、というのも彼を雇用した1つの理由であるが、大きかったのは私の装備の色違いを纏い私と同じく頑なに他人に素顔を見せない点であった。
武器の手入れをし、回復薬を補充。
強敵に備え毒を調合しサックに詰めて我々は出発した。
久々に人の役にたてるという少しの興奮と、殺すべき相手が腐敗した一家、しかも民家人ではなく暗殺者達であることに安堵していたた。
しかしこの頃私はまだ知らなかった。この事件の首謀者、フラール家に協力している者達の正体が誰なのか。
奴らの本拠地の砦に到着した私が見たものは先行した町の衛兵の死体だった。
嫌な汗を流しながら砦内部に侵入する。
壁や横部屋には大量の武器が積まれている。
この砦を大きさだ。奴らの数も多いのだろう。私に声が掛けられる少し前、暗殺者達は大量のアッシュスポーンという化物や、古い砦に眠るかつての将軍を蘇らせてレイヴンロックにけしかようともしたらしい。
何とか防がれたが、何体かのアッシュスポーンは町にたどり着いており、衛兵などに何人か被害者も出ているらしい。
もはやモラグトングの仕事の域を超えている。
周囲で物音がした。剣を向けるがどうやら小さなネズミらしい。今は集中せねば。剣を軽く構え直し周囲を警戒する。
さらに砦を進むと気配に気付いたのか数人が此方に向かって来た。 此方も立ち止まり前方の角から来るであろう敵に備える。
静寂の中敵の足音が数秒響き、目の前に遂に敵達が現れる。
その姿を見て私は驚愕した。
敵は自分と同じモラグ・トングの鎧を付けた暗殺者達だった。
衝撃で一瞬動けなくなりその間様々な考えが頭に浮かび駆け巡る。
突然肩に痛みが走る。敵の刃が肩に走っていた。セロに怒鳴られようやく現実に戻る。
剣を構え、戸惑いながらも立ち向かう。
一撃を与え、とどめとばかりに向かって来る大ぶりの刃を避けて敵の胸に剣を突き刺す。
敵が絶命するのは剣先で感じながら引き抜き、もう片方の手で「炎の精霊」を召喚して奥から来る敵を牽制する。同時にセロがファイアボルトを放ちながら突撃していく。
セロを無視して此方に突っ込んできた敵に備え剣を握り直す。
斬撃音が響く。
数十秒後には自分と同じ装備を付けた暗殺者達の死体が転がっていた。
死体の兜を脱がしていく。全員ダークエルフ、腰の小さなサックからはモラグ・トングの印の付いた議員殺害の指令所が入っていた。
これで普通の暗殺者がモラグ・トングを襲い、装備を奪って身に纏っているという僅かな希望は潰えた。
軽く吐き気がする。セロは事情を察してか何も言わない。有り難かった。
ここで依頼を投げ出すか。
否、もう殺してしまった。今更やめた所で同族殺しの罪は消えない。
混乱しながらも歩を進める。やらねば、今はまず敵を倒さねば。考えるのは後にしよう。
ここで立ち止まっていても巡回が戻ってないことに気付いて大量の敵に囲まれるだろう。
無言で立ち上がり、セロを見る。セロは黙って頷く。
砦を進み次々と現れるモラグトングの暗殺者達をセロと殺す。
最奥の部屋、遂に首謀者にたどり着いた。
二刀流を巧みに操る首謀者は流石に一筋縄とには行かなかったが、 付近に奴らが仕掛た罠に逆に誘導して弱った所にとどめを差した。
一息ついてから首謀者の懐や部屋の机を探るとフラール家とモラグトングが密接に繋がっている事を示す密書が幾つも見つかった。
レイヴンロックに戻り事情を説明すると役人や議員は私を褒め称えた。何と大きな家まで私に与えてくれた。
たが、私の頭の中は自分が殺したモラグ・トングの事で一杯だった。
モラグ・トングは暗殺者組織であったが、その目的は民を巻き込んだ戦争を防ぐこと。大事の前の小事をこなす組織だ。だが今回はどうか。奴らはレイヴン・ロックごと襲撃しようとしていた。
それに、逆恨みを晴らすために利用されるなどと。モラグ・トングと彼らの嫌う闇の一党の違いは仕事を選ぶ事では無かったのだろうか。
議員達と別れた後、レイヴンロックの浜辺で1人思考を巡らせる。
私の小さな誇り
かつてモラグトングだっという誇りは失われた
この兜を脱ぎたくなった。だが出来なかった。
もうこの兜は私の本当の顔であり、兜を脱ぎ、顔を晒せば自分のして来た事に耐えられないだろう。
それに頭には1つの考えが浮かんでいた。
モラグ・トングに戻る。
ただ組織に戻るわけではない。
新たなモラグ・トングを立てる。
私だけがメンバーの…たった1人の戦士となり、モラグ・トングのそして私個人の失われた名誉を取り戻す。
砦では何人かの組織の人間を取り逃がした。きっと同族殺しの噂は本部に広まり私も命を狙われるだろう。
モロウインドゥには居られない。この町にも迷惑を掛けるだろう。
そう言えばセロがスカイリムの大地に興味を持っていた。
極寒の大地スカイリム。そこにもしかしたら私の助けを待ち、モラグトングの名誉を蘇らせる何かがあるかもしれない。
荷物を揃えた後セロに声を掛け、スカイリム行きへの船へと足を進めた。